FEATURE|フューチャー


代表的な作品はトンボのレリーフが施された器です。レリーフが印象的なのでそのイメージが強いと思いますが、レリーフよりもこだわっているのは、白マットの釉調で、ほっこりとした質感のマットな白い釉薬を使用した作品展開をしています。草花や波の紋様等の器もあります。作品は圧倒的に食の器が多いですね。日常生活に入り込みたいので、ふだん使いできる器作りをしています。器を作るときには、夫婦2人か、4人家族をイメージして作っていますね。使い手は主婦目線です。夫婦2人の食卓のおかずを入れる盛り鉢だったり、人を招いたときに使える板皿だったり。自分たちだけでも楽しめて、人を招いたときにも映える器を意識しています。
陶芸や芸術とは全く無縁のミッション系女子校に、小学校から短大までずっとエスカレーターで通っていました。高校のときにファッションの世界に入りたいと思い、美術大学への進学を希望していたのですが、親からの大反対にあい挫折。短大卒業後はスタイリストのアシスタントをしたり、ファッションショーのフィッター(着替えを手伝うスタッフ)のアルバイトをしたりしていました。その仕事の流れで、イッセイミヤケのプレスとして働かないかというお誘いをいただき、就職します。3年間プレスとして勤務していましたが、自分自身で物を作るという夢を捨てきれずに退職。ファッションを志したときに想い描いていた「好きな服を着ることで気持ちが変わる。自分の作った服で生活に彩りをもたらすことができたら嬉しい」という夢は、器にも同様に通じると思い、陶芸家になることを決意。見た目から入るタイプなので頭を坊主にして、飛び込みで茨城県笠間市の陶芸家の元に弟子入りを申し出ました。最初お願いしたときは断られたのですが、会社員時代の貯蓄があったので、給料はいらないから試しに3ヶ月、掃除だけでも良いからやらせてくれ、とゴリ押しして入れていただきました(笑)。結局、その陶房で4年半修業させていただき、その後笠間市窯業指導所の釉薬科を修了して、帰京しました。帰京後は2年間、陶芸教室でアルバイトをしながら独立準備をし、30歳で独立。それから初個展を広尾「ギャラリー旬」にて32歳で行い、今に至ります。


粘土という素材は自分に合っていると直感的に感じました。陶芸家になった経緯でもお話ししましたが、とにかく「器」というキーワードは外せなかった。そうすると大まかに金属かガラス、木、土、の4素材に絞られるわけですが、柔らかい素材が扱いやすいと思ったので、「陶芸!」となりました。
トンボのモチーフには色々な思いがあって。私はガレやドームといった、アールヌーボーのガラス作家の作品がとても好きなんですね。美しさの中に毒々しさがあるというか。自然のモチーフを立体的に施している技法を、陶芸で表現できないかとかねてから考えていました。最終的にトンボに落ち着いたのは、笠間でみた羽黒トンボの美しさが印象的だったから。修業時代は娯楽に触れることもなく、修業し、家に帰って自炊、掃除、筋トレ、読書、睡眠を繰り返すだけの毎日でした。そんな中で自然が魅せてくれた完璧なフォルムとデザイン。あのトンボを見たときは衝撃を受けました。ちょうど師匠の器を天日干しするため、庭に持って行ったときだったなぁ。懐かしいです。

全部こだわっていますが、特に質感と大きさにはこだわっています。質感は、白い器といっても色々ありますが、ほっこりした手に馴染みやすいマットなもの。大きさは私が実際にふだん使っている器のスケールを元に、もう一回り小さいと良いなとか、少し深さが欲しいなとか考えて作りますね。私は自分の器を家でほとんど使わないんです。他の作家の方の器をたくさん使う。よくなぜかと聞かれますが、日常生活で出合う器や使う器って、直接的でなくても頭のどこかにあって、自然と手を通じて品に還元されていく物だと思うんです。それは私にとって、作品を作る上で自然や音楽などから受けた刺激が作品に反映される事と同じ感覚なんです。自分の器を使っていると、自分の中だけをぐるぐる回ってる感じがして気持ち悪いんです。作家も色んな考え方があるから、何が正しいとかはない。自作の器を使う作家の方が本来は多いんじゃないでしょうか。質感も使い勝手も、すべて良いと思って作っているわけですから、本当はそれが自然なのかもしれないですけど(笑)
最初の個展は、2009年に広尾の「ギャラリー旬」で、同じ年に「21-21Design Sight」でもミニ個展をしました。2010年は6回個展を開催しました。2ヶ月に1回ペースですね。2009年の初個展と、2010年12月の「TKG Editions銀座」での個展は印象的ですね。小山(登美夫)さんから2009年秋に打診いただいて、翌年2月に個展をすることが決まったのですが「私、器しか作らないけど、いいんですか?」って聞きましたよ。今も自分では自身の器をアートだとは全然思っていないんです。だから、小山さんのところでやらせてもらうのは、とっても嬉しいし光栄だけど、いいのかなって。そしたら「いいんですよ、器で。僕、特にそういうのこだわらないから」って(笑)。でも思いっきり現代アートのギャラリーじゃないですか。ちょっと悩んだりもしましたけど、いいって言ってくれてるからいいのだろう、自分の思うようにやりたいことをやろう、って開き直って作りましたね。
展覧会は作品を公にする場。目標にもなるし、その度に新しい挑戦もあって、私にとっては必ず続けていきたい活動ですね。品がお客様の手に渡らないと意味がないし、常設ばかりだと新しい作陶への展開が難しくなる。ワガママに好きなように作って発表できるというのは、作家にとってこの上なく幸せで、かつ不安な場でもある。そのプレッシャーを繰り返さないと私の場合はダメですね。適度に追い込まないと成長しないタイプなので。だから所謂陶芸のギャラリーでも展覧会をするし、ライフスタイル提案型のショップでも発表するし、現代アートのギャラリーでも展覧会をやる。色々なタイプのお客様に見ていただくことで、自分も新しい発見があるし、勉強になります。

もちろん、お客様が嬉しそうに持ち帰ってくださるときはとても嬉しいのですが、窯を開けて、思ったように焼き上がっていたときが一番嬉しいです。それまでの数ヶ月がむくわれる瞬間ですから。焼き上がりは窯を開けるまでわからないので、一窯失敗して大ショック!っていうことも当然あります。だから、そういう緊張感が解き放たれる喜びは大きいですね。